ファンが選ぶ! Base Ball Bearおすすめ曲10選! 【シリアス編】

Base Ball Bear(通称ベボベ)といえば青春の爽やかなイメージが強いかと思いますが、1つでもアルバムを通して聴いたことのある方は、彼らの魅力が決してそういった瑞々しさだけではないことに気づくでしょう。むしろ2010年代に入ってからの彼らは、インディーズからデビュー後数年にわたって制作してきた青春ソングを自ら否定しにかかっています。”ベボベ=青春”という分かりやすいモチーフは今や呪いとなって彼らを蝕むレッテルになってしまっているのです。

今回はそんなBase Ball Bearの”非青春ソング”を【シリアス編】と題して10曲紹介します。青春がシリアスじゃないかと訊かれればそんなことはないと思うのだけど、非青春とか孤独とも少し違うような気がしたので、最も近いニュアンスがシリアスということで。

増補改訂完全版「バンドBのベスト」

 

 

 

気付いてほしい

2ndアルバム「十七歳」の最後に収録されている曲。「十七歳」というアルバムは、リード曲「17才」で青春を謳歌しようと決意する主人公が周囲に心を開く決意をする 場面から始まり、そこから出会いや別れ(主に恋愛)を経験するという流れになっています。で、11曲目の「協奏曲」は彼女と永遠を誓うような歌詞でハッピーエンドを予感させるのですが、この「気付いてほしい」では、アルバムで紡がれた物語を「全部妄想でした~!!!!」と言わんばかりに周囲に溶け込めない少年に逆戻りしてしまいます。アルバムの最後の曲でそれまでの流れをぶち壊すのは1st~3rdアルバムで共通しており、何らかの意図を感じますね。アルバムを締めくくる曲なのに、それまでの叙情的な歌詞と全く毛色の違う心の叫びがそのまま歌にされています。

 

 

気付いてほしい

気付いてほしい

 

 

 

 

Stairway Generation

 

「銀魂」のアニメOPにも起用されていたので、比較的知名度が高い曲です。3rdアルバムの1曲目、アップテンポ、3分少々と何かとノリやすい曲ではありますが、問題はやはり歌詞。2ndアルバムまでは丁寧に青春を表現してきた小出祐介の、青春を抜けての葛藤がたった3分ちょっとに込められています。「孤独と言う名の風邪 19で終わりじゃないのかい?」という歌詞に代表されるように、高校生活を暗黒時代と表現してきた彼が卒業しアーティストとして人々から支持を得るようになってもかき消せなかった孤独、そのやり場のない怒りをそのままぶつけたような曲です。

 

Stairway Generation

Stairway Generation

 

 

 

ラブ&ポップ

3rdアルバム「(WHAT IS THE) LOVE & POP ?」の13曲目。タイトルの由来は「新世紀エヴァンゲリオン」でお馴染みの庵野秀明が監督した映画です。ベボベの中でもトップクラスに思い1曲。これを聴けば他の曲の聴こえ方も変わるのではないでしょうか。「一人だけの僕が一人だけの僕のこと 見つめている 許し合っている」などなど、心に刺さるどころか心を貫いてしまうほどの苦痛を描きながら、それに対してきちんと自分なりのアンサーを曲中で宣言しているのがベボベの素晴らしいところ。

 

ラブ&ポップ

ラブ&ポップ

 

 

 

ido feat.呂布

ラッパーの呂布との共作。もともと小出祐介はラッパーを目指していた時期もあるくらいで、歌詞も韻を踏んだものが多いです。この曲は13thシングル「short hair」のカップリングで、A面とは対照的に”移動”の際に感じる孤独を歌っています。「移動で感じてる わかりやすい孤独」というサビが印象的な曲ですね。タイトルは”I do”であり”移動”でもある、という。ここで言う”移動”にも様々な意味が込められていると思います。

 

ido [feat. 呂布]

ido [feat. 呂布]

 

 

 

スローモーションをもう一度 part.2

ダブルAサイドの14thシングルの1曲。part.2と書いてありますが、part.1は4thアルバム「新呼吸」に収録のため解禁はこちらの方が早かったのです。疾走感あふれるサウンドに、自分が人生の主役でない嘆き・悔しさをひたすらぶつけた聴きやすい1曲。小出祐介の言うスローモーションの正体を、ぜひ聴いて確かめてみてください。

 

スローモーションをもう一度 part.2

スローモーションをもう一度 part.2

 

 

 

新呼吸

4thアルバム「新呼吸」の最後に収録されています。深呼吸ではなく、新呼吸。深いのではなく新しい呼吸です。このアルバムは各曲に対して時刻が割り振られていて、アルバム全体で1日を表現するという非常にこだわりの強いコンセプトアルバムになっています。この曲の時刻は29時。つまり、午前4時ですね。7分弱という大作ですが、その分曲の余韻もたっぷりとあり、アルバムを通して聴くとますます魅力的に聴こえます。また、1日を表現している特殊性ゆえ、当然”次の日”もやってきます。アルバムをリピートすることで、日常の葛藤にある種の答えを出すという離れ業をぜひ堪能してみてください。

 

新呼吸

新呼吸

 

 

 

The Cut -feat. RHYMESTER-

 

日本を代表するヒップホップグループ、RHYMESTERとの共作。ミニアルバム「THE CUT」のリード曲です。小出祐介曰く「世間への怒りを表現した」とのことで、SNSが浸透した現代社会を痛烈に皮肉っています。この曲によって、ベボベがまた新たな方向性を見つけたと言いますか、私は初めてこの曲を聴いたときの衝撃を今でも鮮明に覚えています。なにせ青春とか孤独とかばっかり歌ってた彼らが、人々に警鐘を鳴らすような曲を書くようになったんですから! しかもサビでは直接的で口ずさみやすい言葉を繰り返しながら、他の部分で小出流の暗喩を炸裂させています。自己啓発本とか読むよりよっぽど効き目があるのではないでしょうか。

 

The Cut [feat. RHYMESTER]

The Cut [feat. RHYMESTER]

 

 

 

ファンファーレがきこえる

 

聞き流していればアップテンポの楽しい曲なんですが、これまた歌詞はシリアスです。ただ、これまでの曲のような陰鬱な気持ちにさせる作りではなく、どこか明るい希望を与えてくれるような包容力があります。青春と孤独を歌い続けた彼らがようやく垢抜けた瞬間なのかなと、ファンとしてはちょっと感動したり。アニメ化やドラマ化希望の流れで「現実化希望」という独創的で前向きな歌詞が出てくるのも、この曲のいいところ。ファンファーレなんて昔の彼らには出せなかった単語だろうなあと感慨深くもあります。

 

ファンファーレがきこえる

ファンファーレがきこえる

 

 

 

魔王

5thアルバム「二十九歳」の15曲目。異彩を放つタイトルですが、何かのイベントで小出祐介が「魔王という曲を作っている」という話をした時は、会場中が笑いに包まれていました。それがまさかこんなにも人々の胸を打つ楽曲になるとは……。「魔王」とはつまり”忌み嫌われる”という属性を表しており、”メジャーで人気のある存在になりたいけどそれは自分を捨てることになる”という小出祐介の葛藤を表現した秀逸なタイトルです。どこか爽やかな楽曲なのが非常に感動的。言うなれば彼の決意表明的な曲なのですが、それがこれまでベボベを聴いてきた人々の心情と見事にリンクし、アルバム「二十九歳」の一部分として機能することで、壮大な物語を描いています。ベボベを語るのであれば外すことのできない1曲。

 

魔王

魔王

 

 

 

それって、for 誰? part1

 

一風変わったタイトルですが、こちらも「The Cut」と同様のSNS批判。当時の小出祐介はSNSの使い方に関してかなり思うところがあったようで。ラジオ番組でもそういった趣旨の話をしています。「The Cut」では”情報に惑わされず自分の言葉で語れ”と訴えた彼が、SNSが蔓延する世の中に対しついに怒りを爆発させます。タイトルは要するに「お前の呟き、誰が興味あんだよ!」という意味ですね。タイトルでは和らげていますが、歌詞のおどろおどろしさからは強い怒りを感じます。ちなみに6thアルバム「C2」はこの曲で始まり「それって、for 誰?」part.2で終わるという流れ。part.2では、自分たちはなぜ音楽を発信するのか、というアーティストにとって重要な命題を歌っています。

 

「それって、for 誰?」part.1

「それって、for 誰?」part.1

 

 

 

 

以上、Base Ball Bearオススメ楽曲10選【シリアス編】でした。

彼らにはここでは語り尽くせないほどの暗い側面がありますので、それはアルバム等で聴いてみてください。きっとその完成度に驚くと思います。彼らはアップテンポで口ずさみやすい曲を並べるだけの安っぽいアルバムなど決して作りません。コンセプト、曲配置、全てが計算し尽されたうえでのアルバムです。

私のオススメは5thアルバム「二十九歳」。初回盤がAmazonでかなり安くなっているので、この機会にいかがでしょうか。

 

 

二十九歳(初回限定盤)(DVD付)

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また、ベストアルバムも出ているので、シングルを全曲一気に聴いてみるのもいいかもしれません。

 

増補改訂完全版「バンドBのベスト」

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ベボベのオススメ曲【青春編】はこちら。

 

 

 

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