映画「ジオストーム」ネタバレ感想! 災害映画ではなくただのサスペンス

 

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映画『ジオストーム』ブルーレイ&DVDリリース

 

 

 

はじめに

世界中の天候を自由自在に操作できたらというのは人類の長年の夢だろう。干ばつ地帯に雨を降らせ、豪雪地帯を晴れにする。交通事情や食糧問題の解決にもきっと役立つはずである。この映画は、世界的に災害が多発したという背景があり、その災害を食い止めるために、世界中が手を結び気象を操る衛星を作成したが、数年後、平和の訪れたはずの世界に脅威を与えたのは、その衛星の暴走だった……という話である。

個人的には雨と猛暑が嫌いなので、まあ毎日20度くらいの気温だったらなあと思うが、こういう衛星ができた場合、実際にはどういった使われ方をするのだろう。あくまで災害を食い止めるためだけのものなのか、それとも人類が住みやすいように日々天気を調整するのか。どちらにしても、そういった便利な文明の利器が暴走したら大変なことになる。この映画は人類が自然の脅威と立ち向かう話なのだろうと、ある程度期待して鑑賞したのだが、少し毛色の違う物語だった。というか、それを隠してディザスター映画にしていたような向きさえある。予告やポスターを見たうえで映画を観ていただければ、この言葉の意味が分かるだろう。

 

あらすじ

ある日、気象コントロール衛星が暴走を始めた―。

たび重なる異常気象、頻発する自然災害。この深刻な事態に世界はひとつとなり、「気象コントロール衛星」を開発。全世界の天気は精巧なシステムで完璧に管理され、人類は永遠の自然との調和を手に入れたかに思えた。ところが! ある日突然、衛星が暴走を始めた! リオデジャネイロが寒波に、香港が地割れに、ドバイが大洪水に、そして東京も……。この星をすべて破壊し尽さんばかりの、想像を絶する空前絶後の巨大災害が次々勃発。なぜ⁉ いったい地球はどうなる⁉ この地球滅亡の危機を受け、科学者ジェイクは、再び人類の英知を信じて仲間の待つ宇宙ステーションへと飛び立った―。(公式HPより抜粋)

 

予告

 

スタッフ・キャスト

 

ジェイク・ローソン:ジェラルド・バトラー

気象コントロール衛星・ダッチボーイの開発者。マックスの兄。世界中のクルーと共に衛星を作り上げたことを誇りに思っているが、衛星を手放したくない米国政府と対立し、責任者の任を解かれる。

 

マックス・ローソン:ジム・スタージェス

ジェイクの弟。サラの恋人。ジェイクの後任としてダッチボーイの責任者に任命される。兄とはしばしば意見が対立するが、国家や人を守ろうとする正義感は熱い。

 

サラ・ウィルソン:アビー・コーニッシュ

マックスの婚約者。シークレット・サービス。

 

評価(ネタバレなし)

まず一つ言わせてほしい。違えじゃん!

この映画、思っていたものとは全く異なる映画だった。日本だけのアプローチなのかもしれないが、この映画は決して災害映画ではない。災害に巻き込まれる人々を描いた映画ではないのだ。予告では人類と自然災害の対決を謳うような演出がされていたが、実際にはその対決は映画冒頭で終わっている。ダッチボーイを作ることにより、既に人類は自然災害に勝っているのだ。しかし数年後、ダッチボーイが暴走をはじめ、世界各地で異常気象が観測され、多数の被害者が出る。

で、気象衛星の開発者であるジェイクとその弟で政府の要人であるマックスが、ダッチボーイの暴走は政府の陰謀であることに気づき、世界を守るために奮闘するという物語なのだ。要するに、犯人は誰かを追うサスペンスである。ムキムキおじさんが異常気象と戦うような話では断じてない。おそらく、予告を観て面白そうだと思った人は肩透かしを食らう。サスペンスとして一級品というわけでもないのだ。「あ、こういう映画なんだー」と納得しているうちに終わってしまう、そんな映画である。

しかし、個人的には対立していた兄弟が場所は違えど世界の危機を救うことで絆を取り戻すというプロットに好感が持てる。批評家の意見は辛口だが、観ていられないというほどではない、と。しかし、この記事のために再度鑑賞すると、うーむまあ悪くはないか……と、最初の鑑賞体験を覆す退屈さを感じてしまった。死ぬほどつまらなくはないが、肝心の災害シーンはほとんどが予告で出てしまっているのだ。

災害を推したい宣伝側とサスペンス劇である映画自体との乖離が激しく、映画を観る時にはすでに見どころの多くを知っているという奇妙な状況に陥る。まあ、天候を操る衛星の暴走という切り口のほうが、サスペンスよりも集客は狙える気がするが、客足が良ければよいというものではないだろう。この辺り、宣伝会社が抱えるジレンマだったりもする。

予想外に良かったのが吹き替え。ヒロインに声を当てているのは「35億」でおなじみのブルゾンちえみ。2018年1月公開なので若干ブームに乗り遅れた感はあるが、今でもちらほらテレビで活躍しているのを見る。で、彼女の吹き替えが異常に上手い。さすがアメリカかぶれを主張しているだけのことはある。洋画や海外ドラマをたくさん観てきたのだろう。声が堂々としているし、さすがに強弱は甘いものの、十分に鑑賞に耐えうる声になっている。おそらく何年か続けていけば立派な声優になれるのではないだろうか。

 

作品の感想は以下に。

ここからはネタバレを含みます。 

感想(ネタバレあり)

正直面食らった。予想とまるで違う話なのだから。衛星の暴走は仕組まれたものなのだ。この映画は衛星とのバトルではなく、ただのサスペンスでしかないのだ。「東京が出る!」とあれだけ宣伝した災害シーンもかなりチープ、というかどこかで見たような演出。しかもメインキャラが異常気象の場にいることは少ないので、緊迫感も薄い。各都市が異常気象に見舞われるたび、全く知らない現地の人々や観光客が全力ダッシュする。いやまあ助かってはほしいけれども、そうじゃないだろ……。しかも大体が予告で観たシーンなのだから、こちらの興奮も冷めている。

主人公のジェイクも宇宙でたびたび危機に見舞われる。この辺りはよかった。適度にワクワクさせる演出なのだ。全体としては、おそらく観客が飽きないように至る所に工夫をしている映画なのだと思う。だが、そのほとんどが前述の災害シーンのように大した演出がされていない。また、自然災害の脅威を訴えるような作品でもないので、災害被害者なども特には出てこないのだ。災害映画として宣伝するには弱い気がする。

中盤、政府の中に犯人がいるとされ、大統領本人が疑われる。数日後に世界共有となるダッチボーイを手放したくないのではないか、という推理である。ここで要するに、「誰も信用できない」という状況が生まれるはずなのだが、マックスはシークレット・サービスの恋人や真犯人の男に事情を話してしまう。いやもうさあ。大統領の息がかかっていると思わなくてはならないでしょう。しかも衛星側に修理に乗り込んだ兄貴が死にかかっているというのに。クレバーなキャラのはずなのだから、もう少し周囲に気を付けてもいいのではないか。しかも真犯人に話したせいで狙われることになるし。

そして真犯人=ハゲ(名前を忘れました、すみません)の狙いは、自分が権力を握ること。ありきたりすぎるでしょう……。要するにこの映画、ジオストームでもダッチボーイでも、題材は何でもよかったわけだ。世界を支配できるような力を握るため、悪人が行動に移した計画をいがみ合っている兄弟が潰す。という話。

初見では予告とのあまりの温度差に面白いと錯覚してしまったが、突き詰めて再見してみれば、なんのことはないB級映画だった。強いて言えば、軽い気持ちで鑑賞できるのが救いだろうか。興味のある人は、時間があって暇なときに鑑賞するとよいかもしれない。

 

 

 

ジオストーム(吹替版)

ジオストーム(吹替版)

 

 

 

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