轟と村山の活躍に大感動! 映画『HiGH&LOW THE WORST』評価・ネタバレ感想!

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完結したはずの『HiGH&LOW』シリーズの新作はまさかまさかの人気漫画『WORST』とのコラボ作品だった。発表された当初、私を含めたファンはかなり驚いたものである。始まりはEXILE HIROのプロデュースによるEXILE TRIBEファンのための作品だったはずが、豪華なキャスト陣と、彼らが繰り広げる常軌を逸したアクション、複数のキャラクターが入り乱れる壮大な物語が幅広い層から支持を得て、ハイローという一ジャンルを築いた。かく言う私もハイローを観るまではEXILE系のアーティストなど全く見向きもしなかった人間である。それが今ではドラマやバラエティで見かける度にコブラだヤマトだと大はしゃぎしてしまう。

 

ハイローのストーリーは『FINAL MISSION』で完結したかと思われたが、DTCを描いた番外編の映画が公開され、今回はなんと鬼邪高と『WORST』の鳳仙学園の戦いが描かれる。私は『クローズ』も『WORST』も未読なのだが、予告編にある志尊淳の「鬼邪高潰すぞ」の一言で既にワクワクが止まらなかった。しかも原作者の髙橋ヒロシ先生も脚本に参加。ハイローファンにとっては未知数だが、WORSTファンにとっては堪らない人選。監修に携わることはあれど、原作者が実写化の脚本を書く例はあまりない。要するに本作は『WORST』の実写化にハイローを巻き込んだ作品であり、鬼邪高のスピンオフにWORSTの面々が乱入してきたとも言えるスペシャルコラボなのである。

 

事前に放送されたドラマ版では鬼邪高全日制の派閥を確立させ、楓士雄が鬼邪高に帰ってくるまでを描かれた。映画では、楓士雄が新たにボスになった司一派、3年のヤスキヨコンビによる泰・清一派、1・2年を束ねる中・中一派、全日制最強の轟一派の4つに分かれた彼らが、鳳仙と戦うために一致団結する。派閥争いを繰り広げていた鬼邪高とは違い、頭髪までしっかりと管理された一枚岩の鳳仙には、四天王の小沢仁志と頭を張る佐智雄が君臨している。キドラの策略によって互いに仲間を襲われたと思い込んだ彼らは、全面抗争に突入するのだった。

 

ハイローと言えばとにかく情報量の多い設定が魅力だが、今回もその凄まじさは健在。ドラマ版である程度鬼邪高のことを描き切ったとは言え、新規参戦の鳳仙や絶望団地組まで登場し、ハイローシリーズの人気キャラ・村山までもが立ち回るのだ。しかし、どれだけキャラクターを増やしても一人一人の個性が強すぎるためどうしても印象に残ってしまうのがこのシリーズの強み。ドラマ版より活躍が少なくなってしまったのは残念だが、全日制の面々もきちんとドラマを持って戦闘に参加する。そこに鬼邪高で頭を張ることに悩む村山と、幼馴染の絶望団地組のドラマが加わる上に、それらが複雑に絡み合うのだから見事としか言いようがない。散々宣伝された鬼邪高と鳳仙の戦いは仕組まれたものでしかないのだが、そこに至るまで観客のテンションを着実に積み上げてくれる。

 

鬼邪高のトップになろうとする主人公の楓士雄は団地の仲間である新太がレッドラムに関わっていることを知り彼を正気に戻そうと奮闘する。村山は後輩達が自分のように仲間の大切さに気づいてくれないことに辟易し、肝心の轟はハイローシーズン2から全く成長していない。鳳仙の成り立ちについては詳しくは語られていないが、少ないセリフから佐智雄のカリスマ性が見て取れる。彼もまた、頭を張ることに悩みを抱える人間の一人だった。これだけの人数の物語が交錯してつまらないわけがない。

 

物語は絶望団地組や鬼邪高と鳳仙の面々を紹介した後、キドラによって鬼邪高と鳳仙の抗争が勃発し、その後真相に気づいた彼らがキドラの本拠地である絶望団地に乗り込むという単純なもの。その中でトップを張ることの意味、不良の矜持を問う作品になっており、様々な視点に飛びながらも話の軸はブレない。

 

私がこの映画で何より嬉しかったのは轟の再登場である。ハイローのシーズン2で突如鬼邪高に転入してきた彼は、不良を忌み嫌い、蔑み、だからこそ力で捩じ伏せることを信条としている。見かけは優等生だが、力に魅せられた彼は頭を張る村山を倒すことしか興味がない。逆に当時の村山はコブラとの戦いで頭を張ることに虚しさを感じており、悶々としていた時期だった。そんな彼の前に現れた轟は、村山が囚われていた過去の亡霊であり、超えるべき壁の役割を果たす。轟と戦ったことで、頂上の景色は仲間と見てこそのものだと気づいた彼は、その後劇場版2作目で達磨一家の日向をも凌駕した。

 

私は村山と轟の戦いが描かれるこのエピソードがハイローシリーズで最も好きだ。このエピソードは他の無茶苦茶な展開とは異なり、ジュブナイル的な魅力に満ちている。村山の空虚さもそうだが、轟のキャラクター造形も素晴らしく、その上彼のアクションは洗練されすぎて最早アサシンの域。しかしその後の劇場版では轟はほぼ空気と化す。これには前日譚で描かれた村山の定時・全日分断宣言も関与しているのだろうが、轟推しの私としては当時とても悔しかったものである。

 

しかし、この映画はそんな轟が大活躍する。村山とバトルに挑み負ける轟、他のキャラと明らかに拳の速度が違う轟、とにかく手数で押す轟、お馴染みの轟の姿をようやくスクリーンで拝むことができるのだ。更に楓士雄に肩を貸す轟、石を投げる轟、眼科に行く轟などなど、彼の新しい魅力も堪能できる。正直言って、轟のあの鬼邪高生にしては美しすぎるアクションをスクリーンで観られるというだけでも眼福である。

 

更に今回は後輩達のサポートであるはずなのに存在感とカリスマ性を見せつける村山の魅力も存分に味わえる。相変わらずダンプカーの上に乗って登場し、気怠そうにしながらもやることはきちっと熟す人の良さ。そんな彼はバイトを探して鳶職にも挑戦。結局仕事をする場面はなかったものの、敬語を使う村山は新鮮だった。あの喋り方を聞けるだけでも、ハイローの新作が作られて本当に良かったと思える。関の手首クネクネも健在で、今回は村山・古屋・関の絆も強調されているのだ。ラストで村山は遂に鬼邪高を辞め、新たな道へと進む決意をする。ダンプカーにばかり乗っていた彼がまるでコブラのようにバイクに跨る姿は感慨深いものがあった。

 

轟と村山のその後が描かれただけで十分満足なのに、ハイローは鳳仙という更に魅力的なキャラクターを登場させて我々にはトドメを刺そうとする。頭文字を取ると小沢仁志になる四天王(しかも別役で小沢仁志が登場する)、幹部以外は全員坊主(これは原作からの設定)、強靭な団結力、志尊淳演じる佐智雄のカリスマ性。村山や楓士雄とはまた違ったトップである佐智雄は、この映画が初登場ながら瞼に強烈に焼き付く活躍を見せてくれた。

 

総じて言うと、ハイローを復活させてくれてありがとうございます! という気持ちでいっぱいになる。しかもスピンオフでありながらこれまでで最も話の展開がスムーズというか、ツッコミどころが少なかったように思う。それでいて超絶アクションは健在で、お馴染みのキャラクターも登場し、ハイローシリーズは更に世界観を広げる。前作が山王のDTC、今作が鬼邪高の全日制と、SWORDの次世代を担うキャラクター達のスピンオフが続いているが、残り3チームの物語はいつか観られる日が来るのだろうか。その日を信じてひたすら待ち続けたい。

 

 

 

 

 

 

新装版 WORST 1 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)

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