『眠れる森の美女』に登場しオーロラ姫に呪いをかけるヴィラン・マレフィセントが実は悪人ではなかったという大胆な解釈を、アンジェリーナ・ジョリーの凄味のある演技と強引な展開の力業で大成功させてしまった第1作『マレフィセント』に続き、ついに2作目が公開。原題は『MISTRESS OF EVIL』という副題がついているが、邦題はストレートに『マレフィセント2』。どちらにしても、続編であることに変わりはない。重要なのは、『眠れる森の美女』を下地に作られた1作目と違い、『マレフィセント2』は完全にオリジナルストーリーであること。映画のセリフにある通り、『眠れる森の美女』の物語ではなく、おとぎ話からも脱却を図っているのだ。
前作に引き続き、目力、シンボルマークの角、巨大な翼で観る人の目を引くマレフィセントは健在。しかし、今回は彼女がフェニックスの末裔であるダーク・フェイ〈闇の妖精〉という種族だということが明かされる。ダーク・フェイ達は様々な場所に暮らしていたがいつしか人間たちに追いやられ、辺境の地でひっそりと生活するようになる。そんな彼らが、フィリップ王子の母・イングリス王妃の攻撃を受けて逃走したマレフィセントと出会うことで、人間への復讐を企てる。角と翼という二大シンボルを持つのはマレフィセントだけではなかったのである。鉄が苦手という設定も、この種族の特徴であった。
前作ではマレフィセントの代わりにオーロラ姫の父親がヴィランに設定されたが、本作ではフィリップ王子の母・イングリス王妃が妖精を皆殺しにしてムーア国を掌握しようと企む。マレフィセントとオーロラ姫を招いた食事会の席で、呪いの残った糸車の針を使い夫である王を永遠の眠りにつかせる。その罪をマレフィセントに擦り付け、オーロラ姫やフィリップ王子、国民までも騙してしまう。原作のマレフィセントなど到底対抗できないようなクズと化した彼女を演じるのはミシェル・ファイファー。パワーこそないが、緻密な作戦で人を欺く頭脳タイプヴィランの嫌らしさをうまく醸し出している。
王妃の策略によりケガを負ったマレフィセントは、ダーク・フェイ達に救われる。そこで自らの出自と、彼らが人間に虐げられている現状を知り、命を失った恩人の言葉に感化されて人間への復讐を誓うのだった。一足先にアルステッド国を襲撃したダーク・フェイ達は事前に城を固めていた軍の攻撃により次々と殺されてしまう。絶体絶命に思われたその時、不死鳥の力を手に入れたマレフィセントが登場。王妃を殺すことに執着するも、オーロラ姫の言葉で正気を取り戻す。しかし、王妃の矢により倒れ消滅してしまう。悲しみに暮れるオーロラ姫と、勝利に酔った王妃の前に、巨大な黒い鳥となって再生したマレフィセントが現れる。怯えて逃げた王妃は魔法でヤギにされ、フィリップ王子たちの誤解も解け、ダーク・フェイと人間の関係も修復されて物語はめでたしめでたし。
正直、展開は早すぎるし、人間とダーク・フェイの関係性もうまく提示されないまま修復に至ってしまっている。この辺りの展開の強引さは前作と同じ。おとぎ話ではなくなったとはいえ、物語としては気軽に観られるディズニー映画といった趣である。ちなみに、私の近くに座っていた金髪のギャルはラストシーンで号泣していた。映画としてはやや描写不足が否めないものの、ディズニー映画としては満点の出来。この物語はディズニープリンセスを脇に置き、マレフィセントという最強の妖精の葛藤を描いたシリーズなので、ある意味ではこれで大正解なのである。
また、演出もなかなか目を見張るものがある。まずは高い城壁。アルステッドの城がとにかく高すぎる。そして、その城を軸に展開される人間とダーク・フェイの戦いも見事だった。背中を覆うほどの巨大な翼で飛行するダーク・フェイ達はそれだけで見栄えがする。対する人間たちは弾の中に妖精を一瞬で消滅させてしまう粉を入れ、ダーク・フェイ達に次々と撃ち込む。弾が当たると炸裂し、赤い粉が妖精たちを苦しめていく。ならば低く飛び城壁に沿って姿を現そうとしたダーク・フェイ達だが、人間たちはくす玉の要領で弾をセットし、ぶつかった妖精たちはまたも赤い粉の餌食にされてしまう。この襲撃は突然のことだったにも関わらず、まるで全てお見通しとでもいうようなイングリス王妃の作戦に脱帽するばかりである。そしてこの計略の上手さは、最強の妖精・マレフィセント登場の御膳立てにもなっている。彼女が登場することで、城は要塞としての価値を失い、次々とダーク・フェイ達が流れ込んでくるのだ。
『眠れる森の美女』という原点を持ちながら、「あれはおとぎ話でこっちがリアルよ!」と言わんばかりにキャラクター像をひたすら推し進めていくディズニーには頭が上がらない。大胆すぎるどころか、『眠れる森の美女』のアナザーストーリーや続編を作るというのに、ここまで豪快に原作をぶち壊していくことがあるだろうか。この改変を見れば日本において漫画の実写化で髪形が違う設定が違うと揶揄されることがとても小さいことに思えてしまうのは私だけだろうか。
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