「4人の少年少女が世界を救う」と聞いて、個人的には『スタンド・バイ・ミー』のような冒険譚をイメージしていたのだが、実際にはもっとスリルに溢れ、常に死を意識させてくるパニックアドベンチャーものだった。どちらかというと、『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』に似た物語。あの映画の登場人物が全員モロ子ども(『ジュマンジ』でも外見が大人なだけで中身は子ども)といった内容だった。突如異星人が襲来し、キャンプ場で出会った4人の少年少女は、宇宙飛行士から世界を救う鍵を渡される。世界の命運は彼らに託された。
それぞれトラウマや悩みを抱えた4人が、仲間と共に冒険へ出かけ、時に衝突しながらも世界を救うために前を向いて進んでいく。全く違う者たちとの冒険だからこそ、これまで人に打ち明けられなかった自分の弱さを曝け出し、それを乗り越えることができる。自分のせいで父親が死んだことを悔やむ内気な赤毛の少年、金持ちのボンボンだったはずが人生が急転落したおしゃべり少年、一人ぼっちで育ってきた中国人の少女、少年院を逃げ出した数字にトラウマを持つイケメン。まるでスーパー戦隊かよというくらい個性の際立ちすぎた彼らが、道中に繰り広げる些細なやり取りの数々に、思わず涙してしまう。
友情や恋愛がしっかりと盛り込まれ、彼らの成長を親目線で楽しむことができる、ハリウッド版『はじめてのおつかい』とでも言うような映画だった。しかし、彼らの行く手を阻むのは、奇妙な形をした四足歩行の、意外にグロテスクなエイリアン。しかも体の一部を犬のような動物に変え、自立させることすら可能。大人たちが平気でエイリアンに瞬殺されるシーンも何度かあり、彼らの旅は一筋縄ではいかない。また、おしゃべり金持ち黒人のダリウシュはかなりませていて、平気できつい下ネタを連発する。子ども目線の物語ではあるが、手放しで子供向けだと言い切ることはできない。むしろ、子どもの頃に戻りたいと思う大人=「元子ども」向けの映画ではないだろうか。
あまりに王道すぎて、4人が冒険を進めていくうちに深まっていく絆に何度も泣かされていたのだが、物語としてはツッコミどころも多い。宇宙飛行士はともかく、軍人までもがアレックス達に鍵を渡すのはその場に部下がたくさんいたことを考えると不可解だし、留置所にたった一人だけ取り残されているというのも妙だ。大体、母艦の座標すら分からないから攻撃できませんでしたというのはマヌケすぎる。何より、物語は宇宙人を撃破してすぐにエンディングに突入してしまったので、彼らのその後は全く描かれない。4人が救世主としてその後の人生を謳歌している姿こそ見ることができるが、ガブリエルやアレックスが親と再会する姿や、元に戻った世界で彼ら4人が普通にキャンプをする姿が見たかったのも事実だ。その辺り、不満を挙げればキリがない。
また、彼らがトラウマを乗り越える話ではあるものの、4人が元から持つ能力がほとんど発揮されない点も気になる。要は、自分のマイナスな面だけではなく、プラスの面を発揮しようという映画ではなく、ただマイナスを乗り越えるだけの物語なのである。アレックスのヲタク知識が披露されることもあるが、それが宇宙人撃破に繋がるなどの展開はなく、もっと彼らのこれまでの生き方を肯定してあげてもよかったのではないかな、とも思う。ただ、ダリウシュの陽気さはこの映画に欠かせない要素だろう。
だが、そういった不満を吹き飛ばすほどのエネルギーがこの映画にはある。「少年少女の冒険譚」にしては、妙に殺人描写が多いし宇宙人もグロテスクだ。彼らの目の前に広がるのは、児童文学によくある冒険なんかよりもずっと凄惨な状況なのだ。そういった描写はさすがマックG監督。『チャーリーズ・エンジェル』や『ターミネーター4』に関わった彼が、可能な範囲で(といってもかなりギリギリのラインで)自分の持ち味を前面に押し出す。そう考えると、4人のやりとりもどこか『チャーリーズ・エンジェル』の3人に通じるものがある。
確かに気になる点もあるが、細かいことなど気にせず観れば、素直に感動できる良作であると思う。静かなシーンで誰かが過去の失敗やトラウマを話すと、「あ、明らかにこれ終盤で乗り越えるやつだ」とニヤニヤできる面白さがあるし、その予想がしっかりホームランレベルで返ってくるのが気持ちいい。4人の子ども達の個性も際立っているし、おそらく誰しもが彼らの心情に寄り添うことができるだろう。それほど王道のつくりで100分ほどという時間もいい。最近Netflix映画はアタリが続いているので、ぜひともこの調子で続いてもらいたいものである。