騎士竜戦隊リュウソウジャー第1話「ケボーン‼ 竜装者」 感想

 

遂に始まった「騎士竜戦隊リュウソウジャー」。情報解禁から何かと「獣電戦隊キョウリュウジャー」との類似性が指摘されていて、キョウリュウジャーのノリが苦手だった私はルパパトとの温度差も相俟って印象はあまりよくなかった。仮にキョウリュウジャーを好きだったとしても、毎年一定のフォーマットを保ちながらも挑戦を続けてきたスーパー戦隊シリーズで、ここまで似通った要素を持ってくるのはどうなのかと。だからこそ騎士という要素が恐竜とどう交わるのか、戦隊初参加のプロデューサー・監督・脚本家がどのようなアプローチをするのかに注目していたわけだが、放送が終わってみると予想を裏切るシリアスさで、いろいろと物議を醸しそうな雰囲気はあった。

 

 

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放送前の懸念

第1話の感想ということで本編開始前に感じたあれやこれやも一応書いておこうと思う。

まずは最初に指摘した通り、2013年に放送された「獣電戦隊キョウリュウジャー」との類似性。4回目の恐竜モチーフということである程度似てしまうのは仕方ないと思う。しかし、色分けや変身アイテムのノリ、3体合体のスタートなど、あまりにキョウリュウジャーを踏襲した点が多く、さすがに見過ごすことはできなかった。毎年挑戦を続けてきたスーパー戦隊がこうまでして人気作の足跡を辿らなくてはならないことに、やはり噂通りルパパト玩具は不振だったのか、と肩を落とした。情報解禁の頃はちょうどルパパトもクライマックスを迎え、私自身過去最高のテンションで日曜日朝9時30分を待ち続けていたため、どんなに話が面白くてもやはり玩具の売り上げなのかと現実を突きつけられたような気分だった。

 

しかし、リュウソウジャーのことが分かるにつれ、見直した部分も大きい。まずはスーパー戦隊シリーズに初めて導入された「騎士」というモチーフ。今までも騎士っぽい作品はあったが、ストレートに「騎士です!」と打ち立てた作品は初めて。解禁されたビジュアルも恐竜モチーフにそぐわない高貴さを漂わせていた。この時点で、キョウリュウジャーよりは大人っぽい物語もしくは、感情に素直な5人が騎士として気高く成長していく様を描く物語なのかなと、徐々に期待値も増していった。

 

キャストが発表され、まあ例年と同様に次々と年下のヒーローが生まれることに涙を呑みながらも、渋江譲二や団時朗など特撮ファンにはお馴染みの顔ぶれが重鎮として配置されるのは感慨深いものがあった。ロボのキシリュウオーもストレートにかっこよく、特にキシリュウオータイガランスには一目惚れしてしまう。また、ゲスト怪人のマイナソーが近年お馴染みの漫画家・久正人がデザインすることも発表され、第1話に登場したドラゴンマイナソーの圧倒的な怪獣感には思わず舌を巻いた。

 

 

バンダイ 騎士竜戦隊リュウソウジャー 騎士竜シリーズ04 DXタイガランス

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つまり、鑑賞前の感想としては期待半分懸念半分といったところである。特に2年連続で変化球が続いたこともあり、ストレートにかっこよさを打ち出している点は評価できるが、それがキョウリュウジャーを踏襲したものが見え見えである点がどうも気に食わないなあ、と。人気作の使い回しをするのはスーパー戦隊らしくないなと感じていた。

 

ここからは鑑賞後の感想。未見の方はYouTubeで第1話が公開されているので是非。

 

 

 

放送後~すみませんでした~

本当にすみませんでした。上記で連ねたキョウリュウジャー要素とはしっかりと差別化を図っていて、それどころかここ数年のニチアサ第1話が抱えていたジレンマまでも吹き飛ばすとんでもねえ作品。終わった瞬間、いやマジでこれ革命だろとスーパー戦隊の底力を感じさせられた(革命的な点を敢えて引き継がずその戦隊の特徴で終わらせてしまうのもこのシリーズのすごいところ)。

 

キャラ説明ガン無視の超絶展開

最近のニチアサの第1話は、大概がキャラクター説明と玩具紹介に費やされる。それは特撮初心者やメインターゲットの子ども達、そしてその親御さんへの配慮&玩具の販促が要因なのだろうけど、どうもそれが足枷になっているようにも感じていた。レッド、ブルー、ピンクと色分けされているにも関わらずそれぞれのキャラの精神性や特徴を次々と打ち出し(しかも近年では全てコミカルに描かなければならない病気にかかっている)、やけにおしゃべりな変身アイテムや武器の解説を織り交ぜる。そして変身の際には簡単な決意表明&心情吐露。要するに、世界観よりもキャラクターと玩具を優先した構成が多く、誰でも入り込みやすい作品作りがなされていた。もちろんこれ自体も数十年かけて東映が辿り着いたニチアサの様式美であり、そこは評価すべき点だと思う。しかし、毎週欠かさずニチアサを鑑賞している身としては、第1話のノリは設定を読んだだけである程度把握できてしまうというジレンマがある。この法則からは逃れられないが、仮に1話が所信表明ルートで決定だとしても1年の期間が物語をきちんと育てていくので大きな問題ではない。そう思って妥協していた……。

 

そんなニチアサファンを思いっきりぶん殴ったリュウソウジャー第1話。キャラの魅力は置き去りにし、力の継承・設定の説明・マスターとの死別・大迫力のロボ戦で魅せる魅せる! 初変身が意外とさらっとしてるなーと思いきや覚悟を決めた変身で初回を閉じる素晴らしい構成。各マスターとの共闘パターンもいずれは来るだろうと予想していたがまさか1話でしれっとついてくるとは。

 

こっちが散々騒いでいたキョウリュウジャー要素なんて作り手はとっくに気づいていて、それを振り払うようなスピード感で新鮮味を提供。いやあとんでもない。ロボの合体シークエンスすらなく、キーアイテムのリュウソウルも説明を省いてバンバン使っていく。第1話というよりも勢いを重視し前日譚を描いたスピンオフのエピソード0のような感覚。それほどまでに衝撃だった。”第1話のお約束”を次々と破りエピソードのインパクトと特撮の迫力でゴリ押し。これは逆に言えば、ここまでキャラクターの紹介を省いておきながら色分けでなんとなくキャラを掴めるという、スーパー戦隊シリーズが長年かけて培った土壌の深さをも感じさせる。

 

 

ロボ戦の迫力

予告でもある程度分かっていたのだが、今回のロボ、キシリュウオーは走る。ロボと言えばやはり雄々しく屹立し、一歩一歩大地を踏みしめるように歩いて大剣を振るうのがお約束だが、キシリュウオーは膝の関節を存分に遊ばせ全力で走る。その姿が滑稽ではなく、むしろ優雅に見えるバランス感覚に思わず唸る。人間味ではなく気高さが勝る絶妙なライン。また、キシリュウオーはジョイント合体という新機構を活かして蹴りも放つ。ロボ戦は毎年見所で、特に初回のロボ戦はその作品のカラーを決める重要な一幕になるわけだが、リュウソウジャーにおいては疾走感がキーワードということなのだろうか。もしくは他の騎士竜と合体すると戦法も大きく変化するのか。

 

そのキシリュウオーに負けず劣らず脳裏に焼きつくのが、今回のゲスト怪人もといゲスト怪獣であるドラゴンマイナソー。予告でも怪獣感が取り沙汰されていたが、思った以上に”怪獣”だった。そういえば近年の戦隊に登場した怪人はお喋りなキャラクターが多い。ルパパトなんかは、敢えて強めのキャラを設定していた向きもある。そんなおしゃべり怪人達に慣らされた我々の頭にガツンと響く”怪獣”の文字。リュウソウジャー側のティラミーゴが最近の発表に基づく水平型ティラノサウルスなのに対し、ドラゴンマイナソーはザ・怪獣といったフォルムのゴジラ型。ゴジラシリーズのファンとしてはドラゴンマイナソーの演出にもあらゆる怪獣映画へのリスペクトを感じ、嬉しくなった。

 

 

バンダイ 騎士竜戦隊リュウソウジャー 変身ブレス DXリュウソウチェンジャー

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微妙な点

ここまでで書いたように、リュウソウジャー第1話はキャラクターの説明を敢えて省き、物語の疾走感と特撮の迫力でゴリ押ししていく近年稀に見るお約束破りな作品であった。ネットでは「リュウソウジャー 微妙」というサジェストも出てくるが、これはそのことが要因なのではないかと思う。キャラクター説明がほとんどされなかったため、視聴者はコウ達のことがほとんど分からない。印象的なセリフや特徴的な語尾・口癖もなく、正直キャラを掴むにはまだ時間が必要な印象だ。だが、そこがむしろ挑戦的で好感が持てる。キャラの描き方が甘いのではなく、敢えて物語に振り切るという構成なので5人の内面に関しては次回以降1年かけて語られることになるだろう。不安よりはむしろ、この勢いを終盤にキャラ立ちまくった後でも見せてくれたら嬉しいなあと早くも最終回への期待値が高まった。

 

個人的に気になったのは騎士の要素が意外にも少ない点。あれだけ騎士と恐竜を打ち出していたのだが、コウ達やキシリュウオーから気高さは一切感じられない。むしろ師匠を殺した敵を討とうとする感情的な一面がクローズアップされてしまった。ロボのダッシュもよかったが、騎士かと言われると首を傾げる。しかし、コウ達は力を受け継いだばかりの新米リュウソウジャー。ここから1年かけて騎士竜戦隊として成長していく物語なのかもしれない。

 

 

最後に

上堀内監督の持つ独創性と、特撮初参加の山岡脚本によるシリアスを強く打ち出した作品。EDダンスでのブラックのキレッキレの動き(公式サイト見たら役者さんの特技がマイケルジャクソンのダンスらしい)が頭から離れないが、バンバの登場は次回以降になりそうだ。なんにせよ、ストーリーをゴリ押ししてしまっているために、この1話ではまだ評価できない点も多い。だが、ニチアサのお約束を破ったという意味ではある種好意的に捉えたい。この人物紹介省略が続くのではなく、1年かけてキャラクターの関係性が深く描かれることを願うばかりである。

 

 

騎士竜戦隊リュウソウジャー主題歌【限定盤】

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第2話の感想はこちら。

 

 

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