早いもので、2020年も残すところあと数日。コロナウイルスによって色々と大変な一年であり、今もまだ外国人の入国を止めたりと未曾有の事態は続いている。そんな激動の年に始まったのが令和仮面ライダー2作目『仮面ライダーセイバー』。『ゼロワン』も撮影休止により総集編が挟まれ、恒例の夏映画すら冬に公開する運びとなった。こんな時でも毎週決まった時間に新作を届けてくれるのは本当にありがたいし、東映やテレビ朝日、バンダイ、その他関わってくれている人々みなさんに頭が上がらない。でもね、私自身は比較的楽しく観ているけど、それでもやっぱり看過できないくらい粗が多いよね、とふと思ってしまうのがこの『仮面ライダーセイバー』なのである。
というわけで、年末までに放送された第16章までと、TELASAにて配信されているスピンオフ『剣士列伝』、そして先日公開された短編映画の感想を併せて書いていこうと思う。
魅力的な設定
『セイバー』が公式に発表され、玩具展開や作風、ライダーの姿や制作陣が明かされた時、何より感動したのが作り込みの巧さ。剣と本という独特な組み合わせで、3つまでのワンダーライドブックを差し込んで変身。それぞれ右・中・左に力を宿していくシステムは、換装のギミックも相俟って目に見えてパワーアップしたな~という感じが強い。それぞれのライダーは火・水・雷・土・風・音・闇と見事に属性で差別化されている。しかも主人公が使うのはドラゴンの力。炎属性でドラゴンで聖剣で、と、男の子が大好きなモチーフをふんだんに使った豪華ラインナップ。
そして驚くべきは多人数ライダーであるということ。龍騎、カブト、鎧武、エグゼイド、そして前作のゼロワンと、多人数ライダーと呼ばれる作品は多々あるが、その多くがライダー同士の戦いや正義のぶつかり合いに尺を割いてきた。実際このいがみ合いこそが平成ライダーの名物にもなっているし、これらの作品に慣らされた私たちはライダー同士が戦っているだけで興奮を覚えるように調教されてきている。しかし、このセイバーは一味違う。裏切ったカリバー以外のライダー全員がソードオブロゴスという組織に属しており、要は一枚岩なのだ。多人数ライダーの通過儀礼ともいえる、ライダー同士の戦いとは一旦距離を置き、剣士VSメギド&カリバーの構図をじっくりと描く。これはある意味革命だとも思う。
また、結構日常的に本を読む私としては、本がアイテムとなっているのもポイントが高い。この世界を創った1冊の本、それを悪の手から守るために戦うというファンタジーな世界観も良い。ただ、本といっても学術書などよりあくまで「物語」にスポットを置いているのはちょっと惜しいなあとも思う。確かに子どもには分かりやすいだろうが、本はもっとバリエーションに富んだものなので。あと、幻獣・生物・物語の3属性なのもちょっとよくわかんない。幻獣と生物を分けるのは何?
制作陣は高橋Pと福田脚本という『仮面ライダーゴースト』コンビ。『ゴースト』と言えば、平成ライダー史上最低と呼ばれることも多いし、実際その意見も理解できるくらい微妙な作品なのだが、それでも根底にあるSFチックな設定や眼魂というギミックは割と好きで。設定を踏まえて鑑賞すると実は味が出てくるのが『ゴースト』の凄いところだと思っている。だからこそ、見せ方や演出でもっと面白い作品にできなかったのかなとは感じる。しかし、それは逆に言えば一度『ゴースト』を作ったメンバーがその反省を活かしてまたも仮面ライダーの新作を、しかもこの大変な年に始めるという意味で。『ゴースト』で力をつけた彼らがどういう作品を作るのか、楽しみな部分は大きい。
とまあ、鑑賞前は割と期待値が高かった。アンチも多いけど、自分は結構『ゴースト』が嫌いになれないので。
超絶スピードの物語
で、実際放送が始まってみて、第1章で幻滅した。この世に面白くない第1話なんてないというのが持論だったのだが(展開も好きなだけ盛り込めるし、予算もあるから映像も迫力出せるし)、『セイバー』の第1話は本当にきつい。記憶を失っている青年が、火炎剣烈火を抜き、仮面ライダーセイバーに変身する。本当にそれだけの話で、飛羽真の個性や目的が全く見えてこない。ちょっとビックリした。一応、「約束を必ず守る男」というキャラ付けはあるのだけれど、それがあんまり変身することと関係ないし。『ゴースト』の1話は主人公の死という衝撃的な掴みがあったのに、同じ制作陣がここまで虚無な第1話を作り出せるものなのか……と本当につらかった。
続く第2章、倫太郎という面白いキャラクターが何とか場を盛り上げる。2号ライダーには珍しく、話も通じるし理解も早い。20年近く、いきなり攻撃してくる2号ライダーばかり見させられていたので、彼の人間力の高さには衝撃を受けた。おまけに賢い割には世間知らずで甘いもの好きというギャップ。16話まで観た今でも、倫太郎が一番好きなキャラクターだし、飛羽真よりもよっぽどキャラクターとして生き生きしている。
第3章で登場した仮面ライダーバスターこと尾上さんは、なんと子持ち。子育て王を自称するパパさんライダーという令和らしい3号ライダーなのだが、ノリがキツい。続く第4章も含めた前後編なのだが、視聴者が想定していた若い者を重んじる年長者という立ち位置ではなく、マジで面倒なオッサン(しかも子持ち)という属性しかないクソオヤジが出てきてしまったので本当に引いた。設定と人格にかなりの乖離があった。
その後は賢人や蓮が変身・登場し、カリバーの正体と失われた飛羽真の記憶に迫っていく。で、やはり気になるのがドラマパート禁止されたのか?と疑うくらいにとにかくアクションとメインストーリーだけが展開されていること。
アクションは実際すごく好き。坂本監督以外の回でも、各ワンダーライドブックの特性やそれぞれのライダーの属性や特徴・バトルスタイルを活かし、組み合わせた気持ちのいい必殺技が飛び交い、爽快感がある。殺陣もエフェクトも、何もかもが完璧で、20年間で培ってきた技術の集大成のような趣に富んでいる。ブレイズの流れるような剣捌きに、バスターの力強い一撃、剣斬のスピード感溢れるアクロバティックな動き、カリバーの落ち着いた強者の風格。剣アクションという縛りがありながらも、そこに各キャラクターの個性を乗せて巧く演出する素晴らしさ。仮面ライダーのアクションは一つの到達点に至ったのだなあと感慨深い。
メインストーリーも結構面白い……と思っている。個性豊かな剣士たちが世界の均衡を保つためにメギドと戦う。裏切り者の剣士・カリバーの正体に迫っていく物語はよかったし、第16章で少しずつ明かされたが、アヴァロンに居た謎の男やサウザンベースから来た女、そして最も謎めいた男・タッセル。気になる要素が次々と登場してきて、今後の展開が楽しみになっている。
第16章までだと、カリバーの正体に迫りつつ、飛羽真の失われた記憶を徐々に開放し、剣士たち6人が絆を深めていく物語。決戦では、組織の裏切り者・世界の最後は既に決定づけられている・最初に創られた光と闇の剣…などなど、気になる要素が盛り込まれ、2021年以降も目が離せない。離せないが、、、
いかんせんスピードが速すぎる!
急展開も酷いし、縦軸ばかり進めるからキャラクターの積み重ねもないし、だからキャラクターの背景が分からないまま進むし、と思いきや急にどんどん設定が溢れ出すし、カリバーの真相については完全に上条さんの匙加減だし、失われた記憶も予想してた域を出ないし、マジでなんなんだよ!!!!
いや、本当にセイバーの物語、結構好きなんですよ。好き、好きだからこそ、その激動の展開をきちんと感動にもっていくための準備を全くせずにやるのが本当に惜しくて惜しくて。賢人の消滅だけはちゃんとやってた気がするけど、その周りはほぼダメ。いや素人かってくらい、話にムダがない。ムダがないというのは誉め言葉ではない。ムダな回、というか何気ない日常パートこそがキャラクターに深みを与え、セリフに説得力を付与するものなのに、日常描写もなく、それどころか唐突な設定開示によって強引に物語が進む。上から言われたノルマをこなしているだけ、と言われてもおかしくないくらい雑な仕事。設定を詰め込むだけ詰め込むのに、引き算が出来ていないので物語が溢れ出してしまっていて、視聴者の感情が全く追い付かない。第16話まで観ても飛羽真のことをまだ理解できないでいる。
一つずつ書いていこう。
まずは、カリバーの正体。結論から言うと、覚悟を超えた先に希望はあるおじさんこと上条大地だった。というか、「覚悟を超えた先に、希望はある!!」ってセリフもちょっとよく分からない。言う必要なかっただろアレ。
賢人の父親(海堂直也役の唐橋さん!)だというミスリードで緊張感を持続させるも、仲間であるはずのストリウスの爆撃に巻き込まれあっさりと正体を現すマヌケっぷり。剣士たちの猛攻にもゆったりと構え、無表情を崩さない大人の余裕を見せつける圧倒的な強さ。このギャップがたまらない。何を聞かれてもはぐらかす力を持っているかと思えば、第15章で飛羽真に突然自分の全てを教える。
良く言えば、優秀な剣士として戦っていた正義の男だったが、仲間の闇堕ちにより組織を信じられなくなり、裏切り者の正体を暴くために自ら闇の剣士となって、人々を犠牲にしてでも使命を全うしようとしたとてつもなく勇敢な男なのである。仲間と共に人々を救おうとする飛羽真とは正反対の立場にあり、彼からは「あなたは間違っている!」と何度も糾弾される。先代の炎の剣士であり、飛羽真との対の構図もあるし、どう考えてももっと飛羽真とのドラマを生み出せたはずなのに、何故か「父親じゃねえんかい!」と怒った賢人との因縁が生まれてしまい、やむなく賢人を消滅させる羽目に。
上条大地に関しては、絶対にもっとうまい扱いができたと思う。先代・炎の剣士で、15年前の事件で飛羽真を助けたという事実もあるわけだし。それなのにカリバーの正体がわかった時も飛羽真は「俺を助けてくれた人だ」の一言で終了。以降は、賢人を消滅させた敵としての立ち位置になる。そりゃないぜ。
全てを犠牲にしてでも裏切り者を暴き出すという設定はよかったけれども、もっと人々を危険に晒すことを悔やむ場面だったり、剣士たちと戦うのを嫌がる描写だったり、ストリウス達に反抗したりとか、そういうのがあっただけで随分印象が変わっただろう。でも最初は火炎剣烈火とブレイブドラゴンを狙っていて、二匹の竜を合わせることによりアヴァロンへの扉を開きキングオブアーサーを手に入れようとしていたはずなのに、いつから真理の探究者だのと意味わからないことを言うようになってしまったのか。裏切り者を見つけるのにキングオブアーサーが必要だったのかな……。その辺はよく分からない。
カリバーが全部話してくれれば全てが解決したのに、全部はぐらかすし、かと思いきや最終決戦で飛羽真を認めて急に全てを語りだす。ちょっと情緒不安定なおじさんくらいの印象しか持てなかったのは非常に残念。
次に、失われた飛羽真の記憶。空に浮かぶ巨大な本に吸い込まれる少女、そして自分を救ってくれた剣士。最初はこれくらいしか明かされていなかったが、賢人との出会いやメギドとの戦いを通じて、飛羽真は賢人とルナと過ごした子ども時代のことを思い出す。でも、それだけ。散々引っ張ったのに、その記憶の中に重要な出来事があるわけでもない。賢人の言葉からして、二人が幼馴染なのは視聴者は知っていたし、ルナという名前までは分からなかったけど、少女が本に吸い込まれたのは明白。なのに、飛羽真が思い出してもそれ以上の情報が全く出てこなかったことに驚き。なんなんだろう、マジでこの、視聴者の情報量と感情が全く登場人物とかけ離れている感じ。アギトでもエグゼイドでもビルドでも、主人公の失われた記憶といえば、とにかく重要な謎が隠されているものなんだよ! ディケイドに関しては有耶無耶にされたけど。
まあ今後の展開次第で更に重要な謎が飛羽真の記憶の中に隠されている可能性も大いにある。逆にこれで終わりな可能性も十分にある。これは全く読めない。セイバーだから。セイバー、積み重ねが薄くて少ないせいで、もう何をやってもオッケーな作品になってきているのがある意味凄い。
正直、飛羽真の記憶喪失設定は必要なかったんじゃないかな、とすら思っている。その方が上条さんとの因縁もスムーズに作れたし、幼馴染の賢人がいるならってことでソードオブロゴスを信用する流れも生めたし、そうすれば第16章での争いももっと納得できるものになっただろう。そして、「突然現れて一緒に遊んでいた」だけの少女・ルナを助けるために組織を信じられなくなっている飛羽真。非常に心配である。ルナの言葉や性格が飛羽真を変えてくれたとか、もっとそういう設定があっていいんだよ。
長くなりそうなので、物語の粗に関してはこの辺で。
個性的だが都合よく動きすぎるキャラクター
ここからは各キャラについて簡単に。上でも少し語ったが、より具体的に書いていこうと思う。セイバーのキャラクター全員に言えることは、登場時は存分に個性を発揮するのに、それがマジで個性でしかなくメインストーリーにほとんど影響を与えていない、ということ。話の積み重ねがないのでキャラクターが見えてこない。それなのに、最終的には飛羽真を信じる流れになっていて、第16章では唐突に彼を疑う。この掌返しこそセイバーなのだ。
飛羽真。主人公だが、正直一番個性がない。人々を守りたい、世界を救いたいと大きいことを言うし、実際その実力がある人物なのだろうけど、動機が全く伴っていない。自分は烈火を抜けたし人を守ろう、世界を救おう、といきなり思える人格者。約束も締め切りも守る、若き天才小説家。子どもにも優しいし、いつも笑顔が絶えない高身長イケメン。なのに全く個性が見えてこないので怖い。この優しさを獲得したキッカケとか、そういうものがあればもっと好きになれるんだろうけど、記憶が明かされた以上、背景には特になにもなさそう。こういう無条件に良い人をヒーローものの主人公として出してくるの、ちょっとリスクが高い気がする。まして仮面ライダーってそういう主人公少ないので。
倫太郎。一番好きなキャラクター。賢いのに経験が乏しくて常識に疎いという一面もいいし、芽依ちゃんとのコメディパート&恋愛パートがちゃんと面白くてほほえましい掛け合いになっているのもポイント。青いライダーが個人的に好きというのもあるけど、とにかく変身後のブレイズがカッコいい。キングライオン大戦記、マジでもっと大活躍してほしい。バルカンのアサルトウルフといい、メタリックブルーの令和ライダーは本当に素晴らしいと思う。
先代・水の剣士である師匠を殺されたというズオスとの因縁がきちんとある。それなのに1回目以外はズオスに出会ってもそのことをあんまり言わないのはなんなんだよ。家族を幼い頃に失くした彼にとってはソードオブロゴスこそが家族で、だからこそ組織を信じられなくなった飛羽真の言葉が辛い。剣士列伝でもあったが、彼の組織=家族という思想は今後のキモになりそうな予感。なんとかズオスを倒してほしい。
芽依ちゃん。応援&コメディパート&ヒロイン性は完璧なので、このペースで剣士たちとの関わりを続けてもらえればなと思う。『ゴースト』を観るに、ヒロインやコメディキャラクターにはあまり重いストーリーを背負わせないと思うので、多分このテンションのまま突き進むでしょう。倫太郎と同様、嫌味がないキャラなので頑張ってほしい。
賢人。実力があるクールガイ。ファンには悪いが正直、一番不快なキャラクターだった。父親が組織を裏切ったことをずっと気にしており、自分で決着をつけるために雷の剣士になったという背景があるが、父親を説得しようというパートが長すぎるし、カリバーの正体が上条さんだと分かるとそれはそれで取り乱すし、カリバーとソフィアが一緒にいるだけで「組織もグルなのか!」と言い出すし、彼が冷静なキャラだったら絶対にもっとセイバーは面白くなっていたと思う。いや、賢人パパがカリバーというミスリードが要らなかったのかもしれない。
ただ、スピンオフの剣士列伝での一幕はよかった。これを観るか観ないかで、賢人の評価が大きく変わる。雷の剣士として認められた過去と、飛羽真が生きていたことを喜ぶ回想シーンがあるのだが、彼というキャラクターを理解するのにこのシーンが大きな助けになる。マジで本編で飛羽真が生きていることにもっと大喜びしていれば、視聴者との距離もぐっと近づいて良いキャラになったはずなのに。記憶を失くした大切な飛羽真にこれ以上辛い想いをさせたくない、という優しいキャラのはずが、セイバーの怒涛のメインストーリーにより犠牲になってしまった悲劇のキャラクター。今後は闇堕ちして再登場するのだろうか。それはそれで改心させるとなると、また時間を食いそうで面倒なのだが……。
尾上さん。初登場時のクソオヤジっぷりが最悪。でも第5話以降は普通のおじさんに落ち着いたし、所々年長者としての矜持を見せる場面も増えてきたので、第一印象だけが最悪だったのだと思うことにする。初のパパライダーと銘打っておいてアレが出てきたとき、マジで毛利脚本を呪った。『キュウレンジャー』でもそうだったが、毛利脚本は一癖あるキャラクターを創るとき、とにかくめんどくさいやつにするので。戦い方にバリエーションがないのが気になるけど、なんやかんや嫌いではない。せっかくのパパライダーなのに、奥さんの片鱗すら見えないのはちょっと気になる。家庭関係が悪かったのかなとか邪推してしまうので、いつかきちんと説明してほしい。第8話予告で石になりながら「尾上さーーーーーん!」と叫ばれるシーンで爆笑してしまった。
蓮。演技力も性格もヤバい奴でしかない。賢人くん大好きな生意気な若造キャラなのだが、デザストを退けるくらいには実力のある強者。スピード感あふれるアクションがカッコいい。第16章で一人だけ神代に唆されているシーンがなかったり、剣士列伝でのデザストの言葉から判断するに、既にメギド側に片足を突っ込んでいる可能性が高い。賢人くん大好きキャラだった割には賢人くんの消滅を気にしているような素振りがあんまりないが、それはセイバーなので仕方がない。最初は飛羽真を敵視&軽視していたのに、いつのまにか彼を信じるようになっていたのもセイバーなので仕方がない。やり方次第では好きになれそうなキャラクター。
大秦寺さん。演者さんは比較的若いのに、雰囲気からなのか尾上さんと同期くらいになっている。普段は人と目も合わせられない人見知りだが、ブレーメンのワンダーライドブックを使うと性格が豹変する。あと、刀鍛冶。結構設定が盛り込まれている割にはあんまり印象に残らないキャラクターな気がする。第6話で飛羽真がアヴァロンのことを調べているときに協力するが、その最後に「あんたがスラッシュか」の一言でなんやかんや仲を深めたことに未だに納得がいかない。15年も変身出来ていなかったのにいきなり戦える辺り、実力はかなりあると思われる。イマイチ掴めていないキャラクター。
メインキャラに関してはこんなところ。倫太郎のズオスとの因縁、蓮の賢人くん大好き&飛羽真が気に食わねえ、尾上さんのクソオヤジっぷりなどなど、ちょっと出たり消えたりする設定が多すぎるのが難点。後はキャラクターの個性がマジで個性でしかないというところ。たとえば『エグゼイド』の大我なんかは闇医者で「俺以外のライダーは要らねえ」というヤバい男なのだが、実は一番最初に仮面ライダーとして戦ったのに敵を倒せなかったことを悔やんでいて、自分以外にこんな責任を背負わせるわけにはいかない、と他のライダーからガシャットを奪っていたという背景があった。飛彩も、冷酷な男に見えて実は消滅した恋人との「世界で一番のドクターになる」という約束を達成するために、敢えて人と冷たく接していた。『セイバー』のキャラクターにはそういう深みが一切感じられない。エグゼイドのようにやれとは言わないが、個性が個性で終わるのはキャラクターとして結構マズいし、その個性すらも出たり消えたりしている。せっかく個性的なのだから、それを剣士になった背景と絡めるなどしてうまく魅力的なキャラクターを創れるはずなのに、非常に勿体ないと思う。
最後に
第16章はまさかのライダー同士の戦いが勃発。雑誌のインタビューで高橋Pは「全員が同じ組織に属しているが、スーパー戦隊とは差別化したい」というニュアンスのことを仰っていたので、それがようやく表に出てきた形かなと思う。ただ、衝撃的というには些か展開が急だしキャラクター同士の積み重ねが薄すぎる。飛羽真と他の剣士たちとの絆をもっとしっかりと育んでいれば、この展開も劇的なものになったのだろう。裏切り者がいるという事実もつい1週間前に敵だった男から言われただけなので説得力があまりない。サウザンベースの女に唆されただけで一緒に戦ってきた飛羽真を信用できなくなるのもちょっと無理がある。ただ、信頼関係が崩れていき、新たな勢力が登場したことで物語がどう動くのかは興味があるので、まだまだ楽しんで観られている、という具合だ。
セイバー、確かに都合よく動きすぎるキャラクター達に違和感を覚えることは多々あるが、それでも物語の大筋はしっかりしているし、単に見せ方が悪いだけなので、まだ期待はできる。むしろ丁寧に育てたキャラクター達を終盤で一気に傀儡にしてしまった『ゼロワン』の方が罪深いと個人的には思う。というか、年明けから人間が怪人に変身するのが2年続くのなんなんだ。
視聴者置いてきぼりではあるけど、同じ制作陣なのに『ゴースト』とはまるで違うタイプの物語が出せているのは素直に嬉しい。多分、『ゴースト』で中年ゲストキャラを好きなだけイジる日常回をやりすぎた反動が、今の『セイバー』の急展開なのだろう。ちょっと振り切りすぎではあるけど、第16章にはきちんとドラマパートがあったし(むしろずっとアクションしてた第14章はなんなんだよ)、このスピードが今後どこかで落ち着けばきっといい作品になると思うので、期待を込めて作品を鑑賞し続けようと思う。コロナウイルスもあるし、何かと大変だとは思うのだが、制作陣の皆々様にはなんとか頑張ってほしい。
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