映画『ザ・ファーム 恐怖の食物連鎖』評価・ネタバレ感想!

 

またまた新しい赤ちゃんを床に叩きつける系映画の誕生です。劇場公開はなく、GEO先行でレンタル開始されたこの映画。家畜の仮面を付けた人間たちが経営する世にも恐ろしい牧場に囚われたカップルの物語で、確かに起伏があまりなく淡々としているし、やっていることは恐ろしいのにゴア描写に振り切りもしないという奇妙な映画なのだけれど、なんだか雰囲気が妙にハマってしまった。ビジュアルのセンスというか。『最後の晩餐』を模したようなパッケージに惹かれたのなら観るべきかもしれない。

 

弦楽器が奏でる不気味な音楽と荒野の田舎道を背景に、赤字でタイトルとクレジットが出てくる冒頭がなんとも心地いい。これから不穏な映画が始まるなっていう空気感が見事に表現されてる。その道を行くのはLAから旅行に来たカップル。会話の内容からしてそこまで付き合いが長いわけでもないしあまりイチャついてるような関係でもない。ホラー映画によくいるクソカップルじゃないのは救いだけれど、キャラクターは薄い。そんな彼女らが立ち寄るダイナーやガソリンスタンド、行く先々の思わせぶりな雰囲気もすごくよかった。でもダイナーで警告してくれたおじさんって一体何者だったのだろうか……。町の人々は動物仮面たちのやっていることを半ば黙認しているのかもしれない。

 

そしてモーテル(汚すぎる)(ここでさっさと目的地に着きたい彼女と運転で疲れたから休みたいと主張する彼が一悶着ある)に泊まった翌朝、事件は起こる。彼女が目を覚ますと、そこは外。しかも檻の中。二人が夜眠った後にベッドの下から羊の仮面をした男がするっと出てくるのも不気味でよかった。そこから彼女は水をかけられ、女性たちが監禁されている小屋へと連れていかれる。そこでは女性たちは胸に搾乳機を付けられていた。一方の彼氏も別の部屋で目を覚ます。そして視点はモーテルの店主を装っていた牧場主と障碍者っぽい男に切り替わり、牧場の様子が描かれていく。

 

この牧場紹介ムービーののほほんとした演出も好きですね。動物仮面たちは何故か一切喋らないので、必然的に牧場主と障碍者だけにセリフがある。要はこの牧場ではふらふらと町に立ち寄った旅行者を捕らえて家畜としていて、女性は無理矢理孕ませて搾乳、男性は頭を殴ってお肉にしていた。それを材料に結婚式場などに料理を提供しているというカラクリなわけです。セリフでは「牛肉は足りるのか?」とぼかしているけど、この牛肉というのは当然人肉のこと。捕らえた人間のことを徹底的に牛としてしか見ていないのがもう話全く通じなさそうで怖い。肉が足りなくなったから乳を出さなくなった女を使おう、女が産んだ赤ちゃんも殺そう、という判断が瞬時どころか最早奪った赤ちゃんを計量して速攻で床に叩きつけ殺すレベル。どうしてそうなったのか、こんな仕事をしているのかという背景は描かれないのがまた不気味ではあるが、もうちょっと尺をとって説明はほしかったかな。

 

彼氏が脱出に成功し、彼女を救いに行く。しかし道中で牛仮面に気づかれ、その上彼氏は罠に引っかかり動けなくなってしまう。即座に彼氏を見捨てる彼女。いやあまあ倦怠期という伏線はあったけど、それでもこうもあっさりかあ。動けない彼氏の頭にデカイ石落として殺した時のダルそうな仮面たちの動きが好きでした。その後彼女は一人で逃げ続け、バスがあることとその鍵の保管場所を知る。檻に入っていた女性を救い、そのバスへ乗るがやはり鍵がない。急いで鍵を手に入れ、エンジンをかける。やっとの思いで牧場を抜け出せると思いきや、振り向くとバスの座席には仮面の男たちがびっしりと座っていた……。いやマジで何で最初に乗った時に気づかないんだ。それとも鍵を取ってる間にみんな乗ったのか? どちらにしてもこの映像のシュールさがいいんですよね。もう映画の長さからして二人が助からないのは見え見えだったし。そして最後はパッケージにもある『最後の晩餐』風のイメージ画像で終わり。二人とも丸裸で折り畳まれて林檎を食わされている、というオチ。いやまさかパッケージの画像がそのままラストシーンだなんて思わないじゃん。

 

正直内容は薄いんだけれど、演出が良くて結構緊迫感があったのでそこに救われた部分はあります。まあ、赤ちゃんを床に叩きつけるような映画で何が救いなんだという話ですが…。ゴア描写が少ないからグロ苦手な人にもおすすめ、と言えるほど面白くもないしグロいとこは徹底的にグロいので人に薦めるのは難しい。それでもやっぱりなんか動物仮面たちの佇まいとか、スリリングなシーンを音楽で味付けしない感じとか、この薄味感が凄くよかったんですよ……。

 

 

 

 

グリーン・インフェルノ (吹替版)

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