エナジードリンクで人々が凶暴化! 映画『Z Bull ゼット・ブル』評価・ネタバレ感想!

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特殊なエナジードリンク「ゾルト」を飲んだ社員たちが次々と凶暴化し、殺し合いが始まるという物語に「Z Bull」という見事な邦題がついた怪作。ちなみに原題は『OFFICE UPRISING』で、エナジードリンクについては触れられていないし、そもそもゾンビ映画でもない。凶暴化した人々は怒りを増幅させられたような描写にとどまり、意識を失うでもなくただ理性が欠けてしまうのだ。そんな邦題がついていることからも分かるように、この映画は超がつくほどのB級バカ映画。社員全員が凶暴化した会社に閉じ込められるというパニックが軽快なテンポで描かれており、いろんな意味で爽快感がある。

 

本作の目玉となるのがやはりエナジードリンク。巷では飲みすぎると体に良くないという噂もあり、実際に重宝していた人が亡くなった事例もあるようだ。特殊な薬品によって人間が凶暴化という映画は山ほどあるが、それをエナジードリンクに落とし込む辺りにこの映画のノリが強調されている。ただ、エナジードリンクである必要性はあまりなく、邦題で猛プッシュされているほどエナジードリンク映画という感じはしない。それでも凶暴化した人々が缶を片手に殺し合いを続ける姿は滑稽だ。

 

 

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B級映画なので物語も大きくは展開せず、移動も会社のビルに限定されている。凶暴化した社員の目を掻い潜りながらビルから脱出するというのがこの映画の目的なので、当然と言えば当然である。このアモテック社は様々な兵器・武器を開発してきた会社で、窓ガラスを攻撃すると防御壁が展開するようになっているのだが、そうとは知らぬ主人公が脱出のために窓ガラスを壊そうとしてしまう。そして防御壁が張られ、下の階には暴走した社員がうようよしているという絶望的状況が形成されてしまうわけだ。そしてこのイケメンだが情けない主人公、デズモンドのキャラクター造形が本当に素晴らしく、低予算だとかエナジードリンクだとかがどうでもよくなってしまうのである。

 

まず何より、デズモンド役の俳優=ブレントン・スウェイツがとんでもないイケメンなのだ。銃を構える姿は『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグを連想させ、顔の整い方だけで好青年の風格が漂っている。そんな彼は落ちぶれた経理の部署で上司や他部署に散々嫌がらせを受けながら仕事をしており、時に書類をわざと紛失するというささやかな反抗をする日々を送っていた。冒頭20分はデズモンドの就業風景が描かれ、会社にいる同僚や特徴的な社員などが次々に登場する。そこから翌日になって出勤すると、ほぼ全員がゾルトのせいで凶暴化し、ただでさえ個性の強い社員たちがより獰猛になって襲い掛かってくる。最初に他愛もない日常を面白く描写して、展開を動かし1周目の普通の日常と対比させるやりかたは見事。これはタイムリープもので多く見られる手法なのだが、会社の普段の風景と、暴走後の異常な光景が見事に対比されている。設定とノリはアホだが、そういった丁寧な作りがされている部分に好感が持てる。

 

話を戻そう。デズモンド役の彼は本当に素晴らしく、冴えない青年という役が見事にハマっていた。この状況が自分のせいだと罵られた時の表情や、好意を抱いている幼馴染を救おうとする際の表情。さらにアクションシーンでは見事な拳銃さばきを披露してくれる。これを機にぜひブレイクしてほしいがどうだろうか。

 

ゾンビ映画を期待していると肩透かしを食らうだろうが、映画としてのオリジナリティは十分にあるし、明確な殺意を持って暴走する社員たちはなかなか恐ろしい。欲を言えば倉庫の棚やデスクなんかをもっと破壊するほどの勢いを見せてほしかったものだが、それでも主人公たちを猛ダッシュで追跡し次々と飛び掛かってくる戦法はなかなか怖い。ただ、コメディシーンはそこまで笑えるわけでもないので、肩の力を抜いて楽しむくらいがちょうどいいだろう。

 

日本の宣伝では「エナジードリンクで社員が大暴走!」という部分が強調されているが、実際にはそこまでエナジードリンク映画ではない。とりあえず題材に使ってみた程度のものなのでそこに斬新さはないが、日本で展開するにあたり宣伝でそこに目を付けた方々には頭が下がる。結果的にはエナジードリンクという点を面白がっている層も多いようで、本当に映画というのは何が当たるか分からないし宣伝が重要だということを思い知らされた。

 

しかし、本当にエナジーが欲しい人の味方になってくれるような明るいパワフルな作品は他にもある。8月3日現在、劇場で公開中の『ワイルド・スピード スーパーコンボ』だ。壮絶な筋肉と圧倒的なアクションが息つく暇もなく展開される脅威の大迫力ムービーに、きっと元気をもらえることだろう。映画館に行くのが難しいという方はワイスピシリーズを追うのもいいかもしれない。そんなこんなでワイスピのダイレクトマーケティングになってしまったが、『ゼット・ブル』は観て損はしない作品だった。ただ目新しさや面白さが存分にあるかというとそんなことはなく、話題性だけが先行しているようなそんな印象を受けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンビランド (字幕版)

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