『仮面ライダーゼロワン』 第1話「オレが社長で仮面ライダー」 評価・感想

 

仮面ライダーゼロワン&オール仮面ライダーだいひゃっか (講談社のテレビえほん)

 

 

待望の令和仮面ライダーシリーズの幕開けである。先週ようやく平成が終わり、2019年9月1日、遂に令和がスタートした(ニチアサ界隈のみ平成に取り残されていた)。記念すべき令和最初の仮面ライダーはゼロワン。0と1の世界を駆け巡る、コンピュータ関連の物語、01で令和というダブルミーニングなどなど、名前だけでいろいろと考察できるせいで商標登録の時点で話題になっていた。いざ解禁されたビジュアルは正に異形。近年の仮面ライダーにはなかった”気持ち悪さ”を前面に押し出しつつも、黒い素体と蛍光色でインパクトは抜群。その上、虫モチーフであることが一目でわかる見事なデザイン。でもあんな色の虫が家に出たら即殺すなあという絶妙な塩梅。

 

01という名前にふさわしくAI=人工知能を題材にした物語。注目すべきは、近未来的な世界観というのが仮面ライダーシリーズが敢えて触れてこなかった部分であるということ。予算の都合がある中で、実写映像に落とし込んだ時にチープになってしまわないか、無理が出てしまうのではないかという懸念が、SFやファンタジーというジャンルから仮面ライダーを阻んできた。しかし本作は日常の至る所にAIが導入されている世界観が展開される。人工知能が人間の仕事を奪うという指摘はされ続けていたが、その題材を毎週放送されるテレビ番組で扱う勇気は素直に讃えたいと思う。

 

大森プロデューサーと高橋脚本の組み合わせと言えば『仮面ライダーエグゼイド』である。ゲームと医療、両者で命の扱いが真逆であることをテーマに取り入れ、毎週新たな謎が提示される大河ドラマ的なストーリーが人気を博し、奇抜なデザインながら中々の人気を誇っているエグゼイド。今回はサブライターも入るようだが、エグゼイドファンにとっては既にこの2人だけで最強の布陣であり、異常なまでに難解な主要キャラクターの名前を聞くだけで高橋脚本に浸ることができる。

 

 

 

 

令和最初の仮面ライダーとは謳っているが、実際にはこれまでの平成ライダーの流れとそこまで大差はないだろうと私は予想している。というのも、7月に公開された『Over Quartzer』でもあったように、平成ライダーの魅力は「不揃いさ」にあり、それこそ正にその時その時を全力で生きた証である。平成・令和という元号の括りは変われど、その精神は不変であろう。令和仮面ライダーも毎年毎年、新たな風を吹かせることで結果的に不揃いな面々になっていくのだと思う。いや逆に来年はゼロツーが放送なんて可能性もなくはないわけだが…。

 

 

仮面ライダーゼロワン DXフライングファルコンプログライズキー

仮面ライダーゼロワン DXフライングファルコンプログライズキー

 

 

 

とにもかくにも、元号が変わって新たなスタートを切った仮面ライダーシリーズ。その第1話は意外にもSF要素たっぷりで、かなりスピーディーに展開された。お笑い芸人を目指す或人が死んだ祖父の遺言によりいきなり社長に任命され、ゼロワンドライバーを託されて暴走したヒューマギアを倒すという使命を負う。人々を笑顔にするという意味ではこの戦いも同じなのだと気づく彼の姿が眩しく光る見事な第1話だった。或人がお笑い芸人を目指すようになったのは、亡くなった父親がきっかけだということも明らかに。演じるのが山本耕史ということは必然的に或人の母は堀北真希ということになるのだが、問題なのは父親がヒューマギアであることだろう。これは或人の祖父が何らかの理由で亡くなった息子の代わりに作ったということなのか、それとも他に理由があるのか。その父も謎の事故に巻き込まれ死亡し、今回の祖父の死亡の原因も分かっていない。これには滅亡迅雷.netが絡んでいるのかもしれない。

 

今回A.I.M.S.はかなり控えめな登場だった。現場の指揮を執る唯阿とその指示を聞こうともしない諌が印象的だったが、物語にガッツリ絡んでくるのは来週からのようだ。諌はどうやらヒューマギア絶対潰すマンらしいので、ヒューマギアを「人類の夢」と位置付ける或人との対立が楽しみ。それにしても、高橋悠也が『劇場版アマゾンズ』から持ち帰ってきた要素がまさかアマゾンアルファ要素とは…。それでも、ここまで頑ななキャラなら飛彩先生やゲイツよろしく、主人公に感化されて柔軟になってくれるだろうという絶大な信頼がある。それをどれだけドラマティックに見せてくれるのか。

『エグゼイド』では4話まででメイン4人の目的や思考を明らかにし、飛彩・大我・貴利矢の価値観と永夢の意見を擦り合わせていく構成だったので、『ゼロワン』でもあと数話もすればそれぞれのキャラクターをより深く掴めるようになるだろう。この辺りは九条貴利矢を見事に殺した高橋脚本ということで信頼しかない(犠牲者が出るかもという意味では不安だが)。

 

ちょっとパラドを想起させる迅に、立ち位置的に早くも暴走が楽しみな滅(主にゲンム的な意味で)。パラドと迅が異なるのは、ヒューマギアを人類滅亡の道具としか見ていない節があるところ。パラドは自らと同じバグスターが利用されていることに耐えきれずゲンムと離反したが、迅はあっさりとヒューマギアを破壊してしまう。滅に関しては技術班であることぐらいしか情報がないが、この2人もいずれは表に出てくるだろう。ただ、滅亡迅雷.netという名前からして、まだ亡と雷というキャラが出る可能性は捨てきれない。

 

そして、何よりも話題をさらった腹筋崩壊太郎ことベローサマギア。なかやまきんに君が令和最初の怪人というだけでも十分面白いのに、いざ蓋を開けてみると、人々を笑顔にするためのヒューマギアが無残にも人類滅亡用ロボットに変えられていく姿が視聴者の心を打ってしまったらしい。人間が怪人化してしまうのは仮面ライダーの十八番だが、今回怪人になるのは人工知能のヒューマギア。そのうち人類全員が不破諌のようにヒューマギア絶対潰すマンになってしまうのかもしれない。この辺りの人工知能の関わり方という面は、現代社会でも多く取り沙汰されているので、ぜひ物語の題材として扱ってほしいところ。

ベローサとネットで調べたところ、俳優の香川照之が見つけた絶滅種のカマキリ「クジベローサ テルキユイ」というのがヒットした。マギア(暴走したヒューマギア)は絶滅した生物がモチーフのようなので、おそらく元ネタはこれだろう。生物の力を使って戦う仮面ライダー達に対し、滅亡迅雷.netは絶滅種の力でマギアを生み出すというロジックが面白い。ただ、正直言って怪人のデザインはかなり微妙。ライダー側に予算を費やすため怪人が疎かになるのは毎年のことだが、今回に限ってはかなり頭でっかちな上、首から下はこれといった特徴もない。どうしてもチープな印象を受けてしまう。『ジオウ』のアナザーライダーがかなり凝っていた分、このショックは大きい。今後幹部怪人が出るのであれば、そこに期待したいところ。

 

演出面では杉原監督が初のメイン&渡辺アクション監督も初ということでかなり映像に気合が入っていた。人工知能とリンクしたり、いかにもありそうな冒頭のヒューマギア宣伝映像であったり、”近未来”を意識させる映像が予想以上に盛り込まれており非常に楽しめた。公式サイト等ではA.I.M.S.の戦闘シーンにも拘っているようなので来週も楽しめそうである。そしてなんといってもスーツアクター。永遠に主役ライダーを務めると思われていた高岩さんが突然の引退(スーツアクターの仕事は続行)を宣言し、日本中の話題を掻っ攫ったわけだが、その代わりにゼロワンを務めた縄田さんもこれまた見事なものである。ただ驚いたのは、走り方や見栄の切り方、細々とした所作が「なんかいつもと違う!」と思わせてくるところ。スーツアクターにあまり注目していなかった私でも変化を感じてしまった。やはり長い間高岩ムーブを見てきた分、この変化の反動があった。

 

一言で言うと、めちゃくちゃ面白かった。エピソードとしての落としどころも綺麗だし、今後のための謎もしっかりと散りばめられていて、とてもうまくまとまっていたと思う。ここからはキャラクターも増えてヒューマギアに対する価値観も徐々に多様化していくだろうから、今のところは期待しかない。毎年のことだが第1話は事前のあらすじや玩具情報から知り得た情報を統合した30分という感じなので、むしろ本番は来週からである。二人目の仮面ライダー、バルカンが現れるようだが、明らかに或人とは敵対する意見の持ち主。1年間で彼らがどう変わり成長していくのか、今作も楽しみにしたいと思う。

 

第2話の感想はこちら。

 

 

 

 

仮面ライダーゼロワン DX飛電ゼロワンドライバー

仮面ライダーゼロワン DX飛電ゼロワンドライバー

 

 

 

仮面ライダーゼロワン 変身ベルト DXエイムズショットライザー

仮面ライダーゼロワン 変身ベルト DXエイムズショットライザー

 

 

 

仮面ライダーゼロワン DXプログライズホルダー&ラッシングチータープログライズキー

 

 

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